産声を挙げ最初に目にする人間は、愛しき母だった。
大抵の人間ならこの答えに矛盾は無く、幼子には疑問も無いに違いない、生命の全てを無意識に委ねるのだから、宿命はそこで決まってしまう。
子も母もお互いを選べないのは、自然界の法則であり人類の掟でもある、思想の優先権は母であり心の有り様も母の支配下に置かれる。
その疑問に気付くのは年を重ねた頃なので、もうその支配からは逃れられない、何せ逆らえば自分の生存にも関わるのだから。
有り様と生き様のギャップに苦悩しながらでも、100円玉を握り締めコンビニに笑顔で向かう私だった。
別に生活に不自由は感じられず、母の念仏のような思想論にうなずいていれば、生存は保証された。
後に矛盾と言う概念は蒼き春の頃気付くのだけれど、その洗脳に似た支配は鎖のように私を縛り付けてしまった。